斬月愛のギャラリー
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◆黒崎一護
酷い暗闇の中。
しかし、まったく光が無い訳ではない。
目が慣れるに従い、うっすらと建物の影が浮かんでくる。
自然口元に笑みが浮かんだ。
大丈夫だ。
まだ光はある。
自分の立つ場所から、辺りを睥睨する。
これも一護の一部と思うと、その一護が疎んでいる闇の部分でさえも愛しい。
己の闇を直視する事が出来ずに、心弱くなった一護によって自分は今ここに居る。
笑みは消えない。
ここは真の闇ではないから。
ただ、ここからでは何一つ一護に与える事が出来ない。
その思いが拳を握らせた時、一つの気配が目の前に現れた。
口元が綻ぶ。
「何だ?」
「傷つくのを恐れるな」
気配が、相手の動揺を伝える。
「お前は、優しすぎる」
「っ………はっ!何言ってんだっ!!
てめぇは、今俺に吸収されかかってんだぜっ!せいぜい自分の心配をしやがれっ!」
笑みが、深くなる。
「そんなに、主が傷つくのが嫌が?」
暗闇の中で、顔が背けられるのが分かる。
「…何で…何で、あんたは信じられるんだっ!!」
「一護から生まれたのは、お前だけではない。
私も同じ。
だから信じられる。
だから、手を貸さずにはいられない。
お前も私もな」
生の無い空間に、二人と強く結びついている鮮やかな生が生まれる。
「呼ばれているぞ」
「……あぁ…」
「行かなくていいのか?」
「………お前は?」
「まだ、私の出番では無い、私は行けない。
行って来い。私はここで感じていよう」
白い口元から、小さい笑いが漏れる。
「俺は、俺の好きにしていいか?」
「あぁ。それが一護の望みだ」
「分かった。
行って来る」
この空と同じ空、
この空と異なる空。
自分に取っては、今行けなくなった空。
斬月は、暗闇の中、空を見上げる。
「一護…お前を信じろ」
斬月は壁にもたれ、そっと目を閉じる、
今は行けない空で行われている事を静かに聞くために……
−End−